錠前が緩んで鍵が開かなくなってしまいました

子供の頃近所の友達と皆で秘密の基地ごっこをしていました。秘密の基地は子供なら誰でも一度は憧れることがあると思います。
家から少し山の方へ進むと何かの工場跡地だった廃墟があって、そこで子供達が数人で集まって色々遊ぶのにちょうど良い広さのトタンで囲われた部屋を見つけました。それぞれの大事なものを持ち寄って置いてあるので鍵がほしいということになったものの子供ではとても鍵を買いにはいけません。そんなある日、誰かが家で古くなって使わなくなった錠前があったのでこっそり持ってきたらしく、これでいかにも秘密の基地っぽくなったと皆大満足でした。
毎日毎日学校が終わって秘密基地に集まってわいわい遊んだり取っ組み合いをしたりしていました。

もともと古くて使われてなかった上に毎日毎日開けたり閉めたりで酷使されていた錠前はある日壊れてしまいました。鍵を差し込んでいくら回してもクルクル回るだけで鍵は一向にあきません。秘密基地の中には皆の大事なものが置いてあるのにどうしようと皆困りましたが、子供の力では引きちぎるなどもできません。秘密基地なので大人に話すなんて考えもしませんから、一人また一人とそこに行くことはなくなっていきました。

年月は流れ、私は秘密基地の存在をすっかり忘れて暮らしていましたが山を眺めていた時にふと思い出してそこへ向かってみました。秘密基地の扉にはまだあの時の錠前がかかっていましたが、長年の風雨にさらされボロボロに錆びていて、大人になった今の私の力で錠前ごと取り除くことができました。
何十年かぶりの秘密基地の中は、色々古くなって痛んではいましたが全てが当時のままでとても懐かしい思いがこみ上げてきました。当時私はこんなものを大事にしていたんだなと苦笑しつつしばし思い出に浸ることにしました。